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利用者浪内 通 さん 青森市の「日本料理 百代」料理長。青森県調理師会、青森県日本調理技能士会、青森清庖会の会長を務め、フジツボ料理の考案・普及をはじめとする功績で全技連マイスター会金色功労賞など受賞多数。
グルメたちにも「あおもり米=おいしい」が定着。
地元料理人の宿願叶えたブランド米
- はじめに、浪内さんが料理にお持ちの心がけや流儀、大切にしていることを教えてください。
- 高校卒業後に上京し、二つのお店で14年間修行し、32歳で帰青して父親の店を継ぎました。東京は世界中の様々な食材が集まる街ですが、そこで経験を積むことによって初めて、自分の地元・青森が食材に恵まれている土地だと認識できました。季節に合わせてさまざまな食材が入ってくるし、地元で獲れるものだから鮮度もいい。そのため「地産地消」を大事に、地元の食材を使いこなすことを徹底して仕事をしてきました。また、一つの食材を無駄なくすべて使い切ることも心がけています。
- 数ある食材の中でも「米」は日本料理において、どのような存在でしょうか。
- 「基本中の基本」ですね。主食であり、さまざまな用途がある。皆さんがいつも食べているものですから、おいしくて当たり前。その分、調理するには難しさがあり、神経を使います。
地元食材にこだわるのが自身の流儀ですが、米に関しては長らく、新潟県産の「コシヒカリ」や秋田県産の「あきたこまち」などを使っていました。地元産の米を使いたかったけれど、食味はやはり他産地が上でした。それから「つがるロマン」や「まっしぐら」が流通するようになり、「これなら使える」とも思いましたが、全国的なレベルがどんどん上がっていましたので、他県のブランド米よりも食味が優れているとまでは言えませんでした。 - そうした中で登場したのが「青天の霹靂」で、お店でも使われていますね。お客さまの反応の中で、印象に残っているものはありますか?
- 青森でもようやくこのランクの米が出てきたか、と感動しました。「青天の霹靂」が登場するまでは、お客さまによく「お米は何を使ってる?」と聞かれていたんです。そこで「コシヒカリ」や「あきたこまち」といった、県外産の銘柄で答えを返すとうなずいてもらえていたんですが、地元食材にこだわっていた自分としては、そこであおもり米の名前を出せないことにずっと歯がゆさを感じてきました。「青天の霹靂」という全国のトップレベルに並ぶ米が出てきて、それを使いこなせるようになった今では、お客さまから米の銘柄を聞かれることはほとんどなくなりました。聞かれても「『青天の霹靂』です。」と答えれば「おお!」という感じで納得してもらえる。そうしたお客さまの変化がありますね。
- 浪内さんにとっても念願だった特Aのあおもり米ですが、「青天の霹靂」を扱うことにどんな思いを持っていますか?
- この米を作り、届けるためにはいろんな努力があるのだろうと感じています。生産現場には何度も視察にお邪魔しているのですが、生産者さんの工夫や苦労は見て取れます。例えば、青森県はホタテの一大産地ですよね。そのホタテの貝殻を砕いたものを敷き詰めて土壌改良に活用している農家さんがいらっしゃいました。少しでも良いものを作ろうという思いをすごく感じましたし、料理人として、それなりの使い方をしなければ失礼に当たると思っています。

一番のおすすめは、おにぎり!
「おかずがいらないほどおいしいお米」
- お店ではどのような形で「青天の霹靂」を提供してきましたか?
- 米の特徴としては粘りがあるので、例えば飯寿司にしたり。いいお米で作った飯寿司は甘味があっておいしいんですよ。握りやちらしといった寿司に使う分には、酢飯特有のパサパサとした仕上がりではない、しっとりとした感じの寿司飯になります。また、他のお米とブレンドして風合いを変えたりもします。古代米(黒米)と混ぜて紫色っぽくした米を若生こんぶで海苔巻風にしたものを前菜で出したり、茶懐石でのおこげ、焼きおにぎりのお茶漬けなどにも合います。ただ、どれも良いですが、「青天の霹靂」の一番おいしい食べ方はやはり、おにぎりですね。
- おにぎりですか!理由や作り方などを詳しく教えてください。
- 粘りがあって、冷めてもおいしいという特徴と相性がいいと思います。店ではお料理の締めに出しますが、お客さまには評判です。当店のおにぎりは少し独特で、塩ではなく醤油で握ります。戦前にあった食堂が百代の前身ですが、当時からおにぎりは醤油むすび。おにぎりというと皆さん、塩むすびのイメージがあると思いますが、私は祖母が作ってくれた醤油むすびしか食べてこなかったので、逆に塩むすびに違和感があるんです(笑)。醤油でにぎったご飯を海苔で包んで、具は筋子です。「青天の霹靂」を初めて食べたとき「この米には何が一番合うのかな?」と思ったんですが、やっぱり青森県人は何と言っても「あっつうままさ、すじこ!(熱々のご飯に筋子)」。お供になるおかずはいろいろありますが、やはり、これに尽きますね。
- ご家庭で「青天の霹靂」を味わう際、筋子の他に相性のいいおかずや、プロがおすすめする食べ方はありますか?
- どんなおかずでも合いますね。「青天の霹靂」を中心に据えておかずをトッピングしていくという、以前に手掛けた企画では納豆、イカ刺し、まぐろの佃煮、根菜の味噌漬けを乗せて食べたり。塩鮭やさんまなどの焼き魚も良いです。お米自体がおいしいから、どんな食材の味も邪魔せず、噛むほどに甘味が出て、本当はおかずがいらないくらいなんです。そこに味のアクセントとしておかずの味が入るから、何を食べてもおいしく感じます。
ご家庭では炊飯器でそのまま炊いてもらえれば十分です。冷凍した後で解凍して食べても、チャーハンなどにしても、冷めてもおいしい米だからいろんな食べ方ができる。冷めたご飯をレンジアップすると、米によっては極端においしくなくなるのですが、「青天の霹靂」はさほど違いがない。それも特徴だと思いますね。

- 最後に、「青天の霹靂」が歩んだ10年と、ブランドのこれからについて、メッセージをお願いします。
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あっという間の10年、という気持ちです。やはり、農家さんの努力があってこそブランドが成り立っていて、自分たちもお客さまにお料理を提供できています。生産者の皆さんがいて初めてお届けできるおいしさであり、地元のお米を大切にしている気持ちを感じて召し上がってもらいたいという思いがあります。
お米に関しては全国の各産地がみな努力しており、いろんな良い米ができているのも事実。勝ち負けがあるものでは決してないですが、切磋琢磨してこれからも良いものを提供してほしい、という一念ですね。